2018年2月16日金曜日

299:各省庁の課長補佐の問題意識

非常に古い話で恐縮だが、人事院主催の各省庁課長補佐研修の講習をしたことがある。
この研修は年2回、7年間に渡って実施されたものである。
期間は2日間、総勢約50人ほどだった。
古い資料を整理するなかで、平成12年の研修での参加者アンケートが出てきたので、その概略を披露することにする。

日本の教育がいまだに知識偏重にあるなか、教育改革の模索のひとつの視点として参考になればと思う。
つまり単に知識ばかりを覚えるのではなく、万人が共有できる考え方の枠組みを、日本でも構築しなければならないということだ。
この問題は日本人が国際社会で対等に渡り合うための避けては通れない領域と私は叫び続けてきた。




人事院主催各省庁課長補佐研修アンケートの要約

(個別の記入例は別紙)

講義内容:「管理者の思考と決断」
参加対象:各省庁課長補佐52
講師:飯久保廣嗣
実施時期:平成12年9月5日~6日
場所:国家公務員研修センター

設問(I) ラショナル思考の実務における必要性と有効性について……回答51

①必要性について
・「必要性については現時点では、何とも判断できない」といった23の回答を除き、ほぼすべての回答者がラショナル思考の必要性について肯定的に答えた。

・肯定的な意見として、役所における「政策決定」「業務遂行」において、ラショナル思考は必要と思われる、とするものが多かった。

・「実務において問題・課題を解決・対応していくためには問題等を列挙し、複数化し、優先度を設定し、原因の消去等思考プロセスは必要であり、有効である。」

・「前例主義」的な思考業務「非論理的思考」(人情・経験等)によって意思決定がなされがちな現状を変えるきっかけとして必要となり得るとする回答も散見された。

・また「雪印や神奈川県警・新潟県警の問題等」においても「ラショナル思考による対策」が必要だったのではないか、といった具体的な事案に触れた回答も見られた。

②有効性について
・必要性と同様、肯定的な回答が大半を占めた。

・「本省庁等においては必要性・有効性共に大であるとおもう。」

・「普段、意識せず行っている思考プロセスを論理的に整理してみることは有益。そのプロセスの中で自己の弱い部分が発見できれば、意識的にその部分を強化した思考にすると良い」

・有効性に関連して特に多かった点として、ラショナル思考の「体系性」が挙げられる。ともすれば直感的、経験的に判断してしまう業務において、対象をいちど図式化、数量化し、4つの思考領域に分けて分析するという論理的思考の体系性によって、議論・業務が効率化されたり、あるいはヌケ・モレのない判断が可能になるとした意見が多く観られた。

・肯定的な意見に限定を付すものとして、業務に当てることのできる時間に限りがあり、十分な分析ができない可能性を憂う回答、またラショナル思考を実際に導入するに際して先ほどの「前例主義」とバッティングするおそれを指摘する回答が散見された。

・肯定的な意見に限定を付すものとして、業務に充てることのできる時間に限りがあり、十分な分析ができない可能性を憂う回答、またラショナル思考を実際に導入して前述の「前例主義」とバティングする恐れを指摘する回答が散見された。しかし、6年前(当時係長であったと思われる)に飯久保講師の講義を受けた参加者からは、前回同様感銘を受けた、との印象的なコメントも残された。

設問(II)わが国の社会における思考様式(論理思考)の国際化に関する今後の必要性……  回答49件、無回答2

・上記と同様、肯定的な意見が大半を占めた。特に国際化に関しては、「絶対に必要」「ますます重要というか、必要性は増加していくと思う」など、その必要性について強く肯定的な意見を示す回答が多く見られた。

・具体的には、国際化という文脈において、他国と同じテーブルにおいて交渉する際、思考様式を共有することが必要であるとするものが非常に多かった。

・「国際社会の標準仕様に合わせていくということでは、こういったことは今後重要となると認識する。」

・「急速な国際化が進む社会において(中略)多くの人々が論理思考をマスターしていくべきである。」

・あるいは「わが国の国際社会への対応」への「はがゆさ」、「日本が国際社会から置いていかれる」といった問題意識があり、論理的かつ国際的に応用が可能なラショナル思考への評価へとつながっていると考えられる。

・「グローバル社会において日本の思考様式が通用する範囲には限界があり、行政自らが意識の改革を推進するべきと考える」

・「講義の中でおっしゃられていた通り、今日のわが国の国際社会への対応は歯がゆいと感じることが多すぎます。国際社会に大人として対応するにはこの思考様式は欠かせないと思われます。」

・より発展的な回答として、振り返って日本文化にもラショナル思考的な発想はあるのではないか、あるいは日本的な思考とラショナル思考の融合は可能か、等と問うものも見られた。

以上である。

大変残念なことに、現状の教育改革は、この領域に関心を払っているとは思えないのだが、いかがだろうか。

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