2017年3月29日水曜日

247:国会の予算委員会って何?

私も野次馬根性を持つ以上、呆れながらも、森友学園騒動に関する報道をどうしても見てしまう。
なぜかと言えば、どちらが言っていることが事実であるかという結末が見たいということだろう。

とはいえ、この追及を衆参の予算委員会で展開しているということについて、さまざまな国民の不満があるのではないかと思う。

ひとつは、真相を究明する方策は予算委員会以外にもあるということだ。
関係者の利害から遠くに位置する人選による4、5名などの小規模の調査委員会を立ち上げる必要がある。
つまり、当事者(学園、財務省、自民党、野党など)が関わらない人選がされた調査委員会を設置し、より客観的な調査が行われてもよいのではないか。

また、国の資源(ヒト・モノ・金・時間)が浪費されているのを見て、国民は失望しているのではないか。
予算委員会を1日開催するということだけで莫大な額の税金が費やされることになる。
現在の騒動を報道で見た国民が、この件に税金を浪費することをよしとするだろうか。

あるいは、激変する世界情勢の中で、国の最高意思決定機関がこのような優先順位の低い案件に勢力を費やしていて良いのだろうか。
このような案件に時間を浪費していては、G7を控えた現在、日本の首相が、国際社会から、自分の不始末を解決できない人物と見られてしまうことにつながりかねない。

最後に、真相究明とはいえ、この委員会の実態は、やはり与党対野党の対決にしか映らない。
この低次元のやり合いが実際に与野党間の対立であるならば、それは「党利党略」を予算委員会で展開しているに過ぎないということだ。
ちなみに党利党略とは、自分が属する政党・党派の利益と、そのためにめぐらす策略のこと、自分の目的を達成するために相手を陥れるはかりごとである(出典:デジタル大辞典)。

他にも国民が本件について不満に思うことは様々にあることだろう。
国政に預かる代議士や国会議員が傍観することなく、「主権者ファースト」でぜひ考えてもらいたいものである。

2017年3月26日日曜日

246:あいまいな分類と具体的な分類

広辞苑によると、「考える」の意味は「思考をめぐらす。あれこれと思量し、事を明らかにする。思案する」である。
また明鏡国語辞典では、「ある物事や事柄についてあれこれと頭を働かせる。思考する。特に、筋道を立てて問題や疑問を解決しようとする」となっている。
これらは、我々日本人が共通な認識として持つ「考える」ことの定義である。

日本人が国際社会で活躍をするためには、単なる語学力以外に、もっと基本的な概念のすり合わせをすることが必要になるのではないかと思う。
単純に"think"をWebsterで引いてみると、びっくりするような定義が目に飛び込んでくる。

他動詞
1. 頭の中で何かを形成すること
2. 自身の意見を持つこと、判断すること
3. 何かを信じること、推量すること、期待する
4. reasoningによって、何かを決定すること、あるいは解決すること
5. 何かを意図すること、企てること
6. 知的な集中によって、何かを(特定の状況に)追い込むこと
7. 何かを思い出すこと
8. 持続して何かを頭に浮かべること

自動詞
1. 知的機能を活用すること、頭脳を用いて結論、意思決定、推測に至ること
2. 判断すること、結論すること、決断すること、定まった意見として考えること
3. 意図すること
4. 物思いにふけること、瞑想すること、反省すること、思い出すこと
5. 推定すること

私自身、このテーマを考えていて、我々日本人の発想と西洋との違いに愕然とさせられた。
とはいうものの、Websterの辞書の定義は、ほとんどすべて日本人の「考える」ということの発想の中に存在するように思う。
ただ違いは、そのことを、具体的に、分類して意識しているかどうかの違いだけである。

2017年3月22日水曜日

245:あなたは論理的に考えていますか? その1

状況
メアンドレ社はハードディスク小型モーターを製造している。
基本部分は日本で生産し、組み立てはベトナムで行う。
大口顧客からの高度な設計要求に個別対応し、オーダー品を生産することで業績を伸ばしてきたが、一方で、ノウハウを持った優秀な技術者が退社するという問題が生じている。

実は、半年前からオーダー品のベースとなる小型モーターCSXの売り上げが目標未達になっている。価格競争、スペックともにCSXとほぼ等しいSSXは売り上げを伸ばしている。ちなみに、SSXはCSXと用途が違うため、共食いにならない。市場の変化といえば、三か月前に韓国メーカーが同じビジネスモデルで商売をはじめたことだ。
下記の項目の中から、CSXの売り上げ未達に最も関連が深いものを選びなさい。

想定原因A. 韓国メーカーの影響
B. メアンドレ社の営業力の低下
C. CSX販売部隊の有力大口顧客の個別設計要求への対応不足
D. メアンドレ者の総合的な技術レベルの低下

解説
論理的思考に基づく意思決定を行うために何か必要かといえば、それは「真の原因の究明」である。
なぜなら、ある現象が発生したときに、その真の原因を究明できなければ、有効な対策を打つことができないからである。
病気の正体がわからないまま闇雲に薬を飲んでも、効果がないのと同じことである。

A. 売り上げ未達は半年前からであり、韓国メーカーの登場以前から起こっている現象である。したがって、現在は多少の影響を受けているとしても、真の原因とはいえないので、Aは誤りである。
B. SSXの売り上げは好調であり、メアンドレ社の営業部隊すべての問題ではないので、Bは誤りである。
C. この仮説は事実関係を矛盾なく説明できる。よって正解である。
D. 技術的、価格的に同じ競争力を持つSSXが好評なので、メアンドレ社の技術力が劣っているとは言えない。よってDは誤り。

2017年3月15日水曜日

244:選択肢とは何か?

昨今の会話のなかでは、「選択肢」という言葉がしばしば使われる。
これは、国会答弁やビジネスなど様々な文脈においても便利に使われる言葉である。
この言葉は、ちょっと調べてみると、私の手元にある『広辞苑』の昭和41年第1判第20刷では、載っていない。
つまりこの「選択肢」という言葉は、現在広く使われてはいるものの、かなり新しい言葉なのである。

この「選択肢」という言葉が最近まで一般用語として使われていなかったことに驚かれる方もいるかもしれないが、日本人のあいまいな思考方式を考えれば、これは当たり前のことなのかもしれない。
私は、この「選択肢」という言葉が使われるようになったのは、1980年代から日本で活躍している米国系コンサルティング会社が、"alternatives"という単語を日本語で「選択肢」として使い始めたのではないかと思う。

さらに言えば、その背景は、例外的なことを除いて、日本語は単数形と複数形を区別しない言語であるということだ。
英語では、集合名詞などを除き、複数形を表すときに"s"を付ける。
翻って日本語では、単純に言えば、ひとつのテーブルと複数の椅子があっても、「テーブルと椅子がある」ということになってしまう。

さて、"alternative"と「選択肢」は、ともに、ある課題に対して考え得る複数の方策、手段をいうのである。
これに関しては、複数の方策・方法があるのであれば、最適な案を選ぶための判断基準のようなものが必要となるが、その話はまたにしよう。
今回は、日本語は従来、単数・複数を区別していないがため、混乱を及ぼす危険があるということを述べておきたい。
例えば、ある組織で問題が起きたときに、その責任者が「対策は何か?」と質問したとしよう。
その質問者が自身の質問を単数形か複数形か、どちらかで質問しているかの意識すらないのである。
単数形であれば、それを実施しようということになる。
複数形であれば、ある判断基準を作り、最適な案を選ぶことになる。また、もしその案を実施した場合のマイナス影響を考えて、決断をすることになる。

ことの善し悪しは別にして、我々は必要に応じて複数形の発想をすることが望ましい。


状況を複数形でとらえるということは、日本語の「理解する」という言葉につながる。
「分かる」の「分」は「分ける」という語にも使われているように、「理解」の「解」も「分解する」といった意味につながる。

日本人は無意識のうちに複雑な状況を分解して適切な解決をしてきた。
ところが、その思考過程が私から言わせると、「暗算思考」であるため、この思考はまわりに理解されづらい。
ここで言いたいことは、問題に直面したときに、適切な解決策をつくるためには、ものごとを「分けて」みるということが必要だ。

たとえば、太郎・次郎・三郎という兄弟がおり、「この子供たちの成績がよくない」という状況があったとする。
短絡的な発想をする親ならば、「3人とも勉強しなさい!」ということになるのだろう。
このように把握が抽象的であれば、対策も抽象的になってしまう。
子供たちの成績を詳しく「分けて」調査すれば、「太郎は国語が、次郎は数学の成績が下がっており、三郎に関しては問題ない」など、性格な状況を把握し、諸対策を講じることが可能となる。
状況を複数形の視点から考えること、ものごとを「分けて」考えること、これらが重要なことなのではないか。

2017年3月8日水曜日

243:国際競争力強化への一考察

グローバル人材の育成については多くが語られてきた。
国を挙げてのこの問題についての対処はかなりの進捗があったと思う。

ところで、企業存続のために外国企業の買収が盛んにおこなわれている。
とはいえ、最近の東芝の例を見ても、海外企業の買収にも様々な難しさがあるということが浮き彫りになっている。

製造業の組織をおおざっぱに分類すると、技術開発、生産技術、製造技術といったものづくりの側面と、人事、総務、購買、マーケティング、広報などの諸活動というもう一方の側面に分けることができる。
このふたつの側面を実に見事に分担し、世界企業として冠たる実績を残している日本企業が本田技研工業である。
ご存じの方も多いかもしれないが、本田宗一郎氏はものづくりに専念し、藤沢武夫副社長がマーケティング、総務、人事などの組織の運営に関する領域を担ったのである。
これは成功をおさめ、今日も世界中でこのふたつの柱での運営が続いているのではないかと思う。

さて、上に挙げた非製造領域で特に注意が必要な領域が人事である。
本社の人事部門が採用から処遇、昇進に至る権限を持っている企業は、日本以外にはないだろう。
そして多くの場合、事業部長が人事権を持つことが多いようだ。
これは、部下に対し年度内に達成すべき諸目標を合議のもとに部下と確立し、年度末にそれを評価するというシステムである。

海外に進出している日本企業の海外担当の役員は、各地域の日本人の責任者の行動はよく把握している。
しかし、国際オペレーションにおいて何か国の人たちが配下にいるかという質問に即座に答えられる人はまず少ないだろう。
そして、海外拠点における給与体系や各種の処遇なども統一されていないのではないかと思う。
こういったことは、日本企業の海外進出において障害のひとつとなるのではないか。

国際的な組織として安定成長を目指す場合、世界社会全体をカバーする統一された人事関連の制度が必要となるだろう。
なぜなら、現代のグローバルな日本企業ではすでに、企業内における国際的な人事異動が頻繁に起こっているからだ。

2017年3月1日水曜日

242:クリティカル・シンキングを考える その2

先日クリティカル・シンキングについての記事を書いたが、その後インターネットのWebloという辞書サイトでより簡明な定義を発見したので、これを続けて紹介する。

Critical thinking:
The application of logical principles, rigorous standards of evidence, and careful reasoning to the analysis and discussion of claims, beliefs, and issues.


結論を出さねばならない事案を分析・論議する際に、論理的な原則、厳密な証拠の基準、そして注意深い根拠づけを応用すること

関連して、私なりの「クリティカル・シンキング」の、日本的解釈を考えてみたい。
例えば、「筋の通った、堂々巡りの少ない、理にかなったものの考え方」とでもしたらどうだろうか。

このあたりの領域が、日本の教育ではすっぽりと欠けてしまっているという現状があるように思われる。