2016年12月4日日曜日

229:責任者になってその日から仕事ができる人/できない人

1993年にIBMのCEOに就任し、業績が極めて悪化していた当時の同社の経営を再建したルイス・ガースナー氏の前職は、なんと食品会社ナビスコのCEOであった。
昨日までビスケットの会社にいた責任者が、次の日にはIT企業のCEOに就任し、見事再建を果たしたのである。
このことは何を物語るのだろうか。

その昔、私がかかわった企業の社長が、次のようにこぼしていた。
ある役員を抜擢して、成長事業の事業部長に任命した。
そのとき、この役員は社長に向かって、「私はこの分野の経験知識がまったくないので、一年ほど勉強させていただきます。」といった。
事業部の責任者になり、会社から給与を取りながら勉強させてくれとは何事だ。
と社長は嘆いていた。

このことは、ガースナー氏の件とまったく対照的だろう。
つまりルイス・ガースナー氏は、着任のその日から仕事を開始する能力を持っていたのである。
そしてこの能力の本質は、ある分野についての知識や経験から生まれるものではないのである。

それは、いわゆるマネジメント力と言われるものだ。
あえて私なりに「マネジメント力」の定義をするならば、「組織にとってのプラスを伸ばし、マイナスをコントロールする能力」となる。
ごく当たり前の表現ではあるが、これはいかに環境変化に迅速に、適切に対応できるかという思考能力である。
前にも述べたが、広辞苑による「思考」の定義には、「問題や課題に出発し、結論に至る観念の過程」とある。
つまり、どのような状況に接しても、ソリューションを導き出すための思考のプロセスを構築できる能力が重要なのである。

これに関連したことで、過去に役所のキャリアを民間企業が迎えた背景には、キャリアの人間が、どのような業界であれ、直面する状況に対し、ものごとの本質を押さえ、結論を出すためのプロセスが構築できる能力に長けている、あるいはそういった訓練を積んでいる、ということがある。
適切な判断をするための考え方のプロセスは必要不可欠なものであり、このことは日本の組織全体の課題である、という認識を持っていただきたい。
日本の企業が国際社会で存続するためには、世界で通用するコンセプチュアル・スキルとしての思考様式を確立する必要がある。

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