2017年2月15日水曜日

239:三菱自動車と経済産業省

昨年、三菱自動車の軽自動車燃費データ改ざんが発覚し、メディアは大きくこれを取り上げた。
経営陣は責任を追及され、信頼を失った三菱自動車は日産の業務提携を受けざるを得ないという状況に陥ったことはみなさんの記憶に新しいだろう。
このとき、メディアは鬼の首をとったようにこの不祥事を取り上げ、激しく三菱自動車を攻撃した。

ところで、昨年12月26日の日本経済新聞では、経済産業省が繊維産業部門にかんする統計データの改ざんを行っていたということが、ひっそりと報道された。
読者のみなさんの中には「そんなものか」と読み過ごされた方もあるかもれない。
その他のメディアの動きに関しても、私の知るところ、日経以外でこの改ざん問題が取り上げられているところは見なかった。
しかし私は、このことを重大なマスメディアの問題として取り上げる必要があると考える。
その対象や内容が何であれ、国家が発表する統計が改ざんであったことは、国民にとってきわめて重大な関心事であるはずだ。

昨年4月30日の神奈川新聞の論説で、「報道の独立性に危機」という見出しで記事が掲載された。
これはデービッド・ケイ米カリフォルニア大教授が、国連特別報告者として日本の「表現の自由」について調査を行うために来日した際の会見を取材した記事であった。
ケイ氏は、「(新聞や出版などの)活字メディアも政府を批判する記事の掲載が難しくなってい」る、との見解を示したということだった。

現在の日本に充満する恐ろしい傾向として、「何が言われたか」ではなく「誰が言ったか」かを重要視する傾向がありはしないだろうか。
上の会見や記事において、ケイ氏は非常に重要なことを述べているのである。
にもかかわらず、この意見は大メディアには取り上げられなかった。
それはおそらくケイ氏が「有名な」人物ではなかったからである。
きわめて危険な傾向ではないだろうか。

時の権力者の言うことばかりが報道され、正当なサイレント・オピニオンが無視される現象に、我々は注視しなければならない。

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