2018年5月30日水曜日

308:コンセプチュアル・スキルとは その1

日本社会における生産性向上が課題と論じられて久しい。
製造業やサービス業に関する生産性もさることながら、思考の生産性、つまり意思決定の精度を上げないことには、組織全体の生産性そのものを上昇させることは難しい。


Robert. L. Katzハーバード大教授が、マネジメントに求められる3つのスキルとして、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキルに加え、コンセプチュアル・スキルを挙げたことは記憶に久しい。
このような流れを受け、コンセプチュアル・スキルについて、多くの議論がなされたが、しかし今日まで明確な説明や定義はなされていないように思う。
遅ればせながら私なりにコンセプチュアル・スキルについて定義をすると、「直面する諸問題の本質を押さえ、優先順位を決め、結論に至る考え方の観念の過程を論理的に構築できる能力」である。

これから2、3回で、このコンセプチュアル・スキルについて、問題を出しつつ、いつくかの側面から書いてみたい。

このようなことを念頭に置いて、次の問題を解いてみてほしい。
論理的な観念の過程をどのように構築すればよいか、という、まさしく「コンセプチュアル・スキル」についての問題である。



ある中都市の職員たちは、ゴミ収集サービス会社の選定を行おうとしている。現在の会社との契約はあと6か月で終了するが、市の職員たちはこの会社のサービスに不満を持っている。この都市の人口は徐々に増加しており、市の職員たちは対応力のある会社を選びたいと考えている。一方、職員の中には、市独自で行うゴミ収集部門の設立を提案する者もいる。」

ゴミ収集の目的を満たす方法を選ぶための、適切な分析の順序を下記のなかから選びなさい。

①選定基準に照らし合わせて、様々な選択肢を客観的に比較する。
②新しい会社への要求基準をリストアップする。
③何を決定すべきかを決める。
④最も良いと考えられる会社の短所を分析する。
⑤選定基準となる項目を、必ず満たすべき項目と満たすことが望ましい項目に分類する。
⑥できるだけ多くの選択肢を考える。

(A)②→③→④→⑤→①→⑥
(B)③→②→⑤→⑥→①→④
(C)④→③→⑤→①→②→⑥
(D)⑥→③→⑤→①→②→④









正解は(B)である。

本問は、「決定分析」に関する問題である。

ここで最も重要なことは、まず決定するテーマを明確にしなくてはならないということである。
議論が拡散し、意義のないものになることを避けるためには、これをまず行うことが必要である。
その後、選定作業に入っていくが、ここでの要は、複数案を比較するための諸基準づくりである。
また、基準ができた後に一度振り返り、他に選択肢は構築できないかと考える作業も、抜け、漏れを避けるためには必要である。
最後に、提示されている選択肢を、選定基準に照らして評価することになる。

また、仮決定の作業がなされた後には、ここまででは、選ばれた選択肢の問題点が分析されていないため、当該の選択肢について問題点の分析を行っておくことも重要である。
最善の選択肢であることは、無謬の選択肢であるということにはならないからである。

さて、これを単純な問いの流れとしてまとめるとどうなるか。
・何を決めるのか。(決定事項)
・狙いは何か。(目的・目標)
・主目的、副次的目的は何か。
・ほかに方法はないか。(選択肢の拡大)
・まずいことは何か。(実施した場合のマイナス要因)

以上のような論理的な問いの流れ(枠組み)に沿うこと、あるいはこのような枠組みをその都度構築できる、ということが、決定分析という領野におけるコンセプチュアル・スキルであろう。
次回以降で、他領域に関しても、同様に問題を通じてコンセプチュアル・スキルについて考えてみたい。

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