2016年3月9日水曜日

172:問題解決と論理思考力①

米国ETS(Educational Testing Service, Priceston)と共同でTOLAP(Test of Logical  Ability in Problem Solving)を開発したことがある。
このテストは、72問、2時間の実践的な論理思考を評価するものである。グローバル人材の要請が急務である今日、このようなテストも実態を把握するための一助になるのかもしれない。
これからは、折に触れ、このTOLAPから関心がありそうな問題を提供し、みなさんに考えていただきたいと思う。





設問①
携帯電話を開発・製造しているA社は、大口顧客から「発注した大型プロジェクトの工期を三か月短縮してほしい」旨の要請を受けた。A社では、この要請に応えるべく、設計、生産管理、営業、システム等の関連部署が会議を重ね、新しい日程が設定された。現在、関係者が集まって、この日程について詳しく検討する会議が開催されている。
事務部長としてなすべき最も適切な指示を下記の中から選びなさい。


A 想定できるリスクをすべて洗い出し、あらゆる対策を講ずるよう各部に指示する
B 期限に間に合うようなスケジュールを作成し、厳守するよう指示する
C このプロジェクトに重大な影響を与えるところを確認するよう各部に指示する
D ブレインストーミングを定期的に行い、起こり得る問題点を明確にし、対策を講ずる


解説
この設問は「リスクに有効に対応する力」を扱う問題である。




リスク対策とは何かといえば、PとSのパラメータを睨みながら、リスクの顕在化に際し、その影響を最小限に食い止める対策を講じることである。PとはProbability=発生確率、SとはSeriousness=重要度である。


Aは、リスクの重要度Sが考慮できていない。全リスクを洗い出してそれらに対策を講じることは経営資源のムダ遣いである。どのリスクが本件において最も重要なのかを意識すべきである。したがってAは正解ではない。
Bは、単にプロジェクトの期限に間に合わせるためのスケジュール作成を指示しているだけで、「工期を短縮することによるリスクの分析」という重要なポイントを外している。したがってBも正解ではない。
Cは、工期を短縮することにより考えられるリスクについて経営資源を投下すべき重要なところを確認するよう指示を出している。すなわちリスクの重要度を対策のベースにしており、正解である。
Dは、ブレインストーミングの目的が不明確なため、その結果が散漫になる可能性が高く、またSが考慮されておらず適切な指示とはいえない。



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