2017年5月10日水曜日

255:対策の目的別分類

我々日本人が、世界社会で活動するために不可欠な事柄が、英語力の強化であることは言うまでもない。
国民的問題として、この英語力が一向に向上しない原因・背景をもう一度分析してみたい。
近代以降の日本において、軍事力を背景とする外交力、高度な精度を持つ工業力、といった問題は努力のもと達成されてきたが、しかし現在、世界社会のなかで活躍し、貢献するために欠けているもののひとつが、英語力=コミュニケーション力であることは、もはや自明だろう
この認識はある程度国民に共有されているようにも思われるが、それでも一向に実態が改善されない背景に何があるのだろうか。

加工されていないナマの情報を伝達したり共有することは、比較的たやすい。
これらナマの情報を加工して様々な人と議論をし、同意できる、あるいはできないものとして判断を下す段になると、コミュニケーション力が難しい問題として立ち現れてくることになる。

なぜかと言えば、コミュニケーションにおいてしばしば、基本的な概念や言葉の解釈・定義が共有されていない、という事態が起こってしまっているからだ。
例えば、幹線道路で交通事故が発生したとする。
最寄りの警察において、関係者が思いつくままに対策の概念規定を明らかにしないまま議論がはじまったとすれば、これでは解決は困難になるだろう。

さて、このように概念についての定義はコミュニケーションにおいてきわめて重要であり、これは当然英語でのコミュニケーション(英語力)にも関係することである。
これに関連して、実際に日本語で/英語で対策に乗り出そうとするとき、どのような考え方の枠組みがあればコミュニケーションが円滑に、問題なく進行するのだろうか。

そこでは、対策を目的別にきちんと分類する、ということが重要になる。
以下に紹介したい。

①暫定対策
これは、Interim Measure/Actionと呼ばれる。
交通事故の場合で言えば、二次被害を防ぐための、緊急の道路閉鎖などがこれに当たるだろう。
これは発生した事態の拡大を防ぐことを目的とする対策である。

②是正対策Corrective Measure/Action
いわゆる「抜本対策」ともいわれる。
ここでは単なる暫定的な対策を行うのではなく、問題の原因を突き止め、これを除去することが目的である。

③適用対策Adaptive Measure/Action
原因は明確になったが、しかしそれを除去することが現実的でない場合が出てくるということがある。
例えば交通事故で言えば、「道が急カーブであったため」という原因であったとしても、これを除去する(道そのものをつくりかえる、等?)のは難しいと言わざるを得ない。
そこで、「速度制限標識を増設する」「道路に凹凸をつくり、注意を促す」など、状況に見合ったかたちで対策を行うということを目的にするのが、この適用対策である。

④予防対策Preventive Measure/Action
計画の推進や日常活動に起こり得るマイナス事項(リスク)を想定し、その中でも重要なものに対して、その原因まで想定したうえで予防することを目的とする対策である。
「転ばぬ先の杖」という言葉があるが、予防対策はこれに近い。

⑤発生時対策Contingency Measure/Action
予防対策で万全だと思っていても、リスクが実際に発生してしまう、ということも残念ながら存在する。
そこで、予防対策が十分に機能しなかった場合の影響を最小化することを目的に設定するのが、この発生時対策である。
「転ばぬ先の杖」を上手く使えず転んでしまったら? ということを想定し、あらかじめケガの最小化のための対策を打っておくのがこの項目であると言える。

世界社会の活動はもとより、日常生活においても、起こりうることに対する対策が必要な場面に直面したとき、どの対策を確立するのかという発想をもつことにより、関係者の議論が噛み合うことになる。
それぞれが考え、動いているように見えて、その実想定している目的がバラバラなのではどうにもならない。
目的を確認し、いまどの対策について議論しているのか、ということを共有することが必要だ。
これは洋の東西を問わず、真である。

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