2017年5月17日水曜日

256:意思決定と優先順位はどう違うか

意思決定と優先順位。
このふたつの言葉は、比較的一般的に使われているものであるだろう。
しかしそれだけに、どうも両者の意味が混乱しているように思われる。
先日も、NHKの「国民の関心事」アンケートにおいて、やはりこの領域で用語の妙な混乱が見受けられ、残念に思ったものであった。

言うまでもなく、意思決定は単に「決めること」ではなく、ある目的に対して複数の案から最適なものを選ぶ"choice"という行為である。
よって、意思決定は「何を」という対象、「何のために」という諸目的、「どんなふうに」という方法、ある案を決めた場合「どのようなリスクが考えられるか」という想定…これらを設定していくプロセスを経て最終的な"choice"がなされるということだ。
原理的には、これが意思決定の工程である。

対して優先順位は、意思決定とはまったく異なっている。
優先順位とは、複数の検討目的が存在するなかで、「他に先駆けてどこから手をつけるか」の判断である。
しばしば混乱があるように思われるのだが、従って、1,2,3,4...という順番を決めることではない。
「他に先駆けて手を付ける」ものが複数あっても、それはそれでかまわないのである。

意思決定も優先順位も、共に何かを「決めること」であることには違いない。
しかし意思決定は、最適な案を決めることであり、優先順位は、直面する諸課題のなかでどこから手を付けるかを決めることだ。
簡単にまとめてしまえば、優先順位の策定の後、意思決定を行うことが、混乱のない思考プロセスなのだ。
両者は思考プロセスにおいて前後の関係にあり、よってこれらを混同することには、かなり根本的な誤りがあると言わねばならないだろう。

ここで閉じるべきかもしれず、すこし唐突かもしれないが、最後に、この両者の概念の基本的な違いを認識することによって、英語力の上達にも影響する、と指摘しておきたい。
上記のような思考のプロセスは、きわめて普遍的なものである。
つまり、外国でのビジネス等においては、多くの人々は上のような発想に基づき、思考をしているということである。
よって、日本文化圏以外の人たちと英語で会話をする際に、各々の固有の文化を超越した共通の概念規定(上の思考の型)が共有できれば、ただ英語を学ぶということよりも、さらに英会話の上達に寄与するのである。

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