2016年5月7日土曜日

179:目的と手段の混同

日本人に限らず、ものを決める場合、どうしても目的と手段を混同し、これらを区別をして分析をする意識が薄いことがある。
それは、手段に短絡することである。


例えば、会社で何かを購入する立場の人間は、どうしてもカタログを集める、そして各社の担当者から商品についての情報を取るということになるだろう。
これはまさに目的を考えずに手段に短絡するような一例である。


ある会社の企画部が企業買収よる事業拡張を検討する場合、どうしても対象となる候補会社を考え、それぞれに対しての情報を集める、という方法を取るに違いない。
これも手段への短絡である。


手段に短絡するひとつの原因には、ものごとの情報を集めるということには、知的好奇心を満足するという誘惑がある、平たく言ってしまえば、それは楽しいことだからだ、ということがある。
ところが、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報など)の有効活用を考えた場合、また手段に短絡した分析の堂々巡りを防ぐためには、「何のために、何を、どうする」という分析テーマの設定をすることが重要である。
この例で言えば、「事業規模拡大のために、買収する企業を、選定する」ということになる。
タイトルにもあるこの場合の目的というのは、上記のここでいう「何のために」に該当する。


例えば
①5年後の年間売上が20%増加すること
②当社の技術的弱点の強化につながること
③買収金額はできるだけ少なくすむこと
④グローバル戦略対応に貢献できること


など、十数項目の目的が設定されるだろう。
これらの「目的」に対して、「手段」である対象の複数の買収候補がどのように評価されるか、という発想をしていくのである。
実際の大型案件に対する判断業務は複雑なものであるが、目的と手段を分けて考え、手段を検討する前に、諸目的について合意を得ておくことが望ましい。


このような考え方は、我々の日常の判断事項にも応用することができる。
仮に下記のような問題を想定したとすると、みなさんだったら、どのようなアプローチをされるだろうか。




中村さん一家は、両親と同居することを決めたため、新居の購入を検討している。
中村夫人は購入金額に基づき、いくつかの不動産会社を回っている。
中村氏も友人に相談し、いくつかの物件が候補として挙がっている。
さらに、子供の通学、病院への利便性、職場までの通勤なども考慮に入れなければならないと思っている。
このようななかで、あなただったらどのように考えるだろうか。


A.最初に購入物件のおおよその地域を選ぶ。
B.まず購入する住居を判断するための項目について合意をする。
C.信頼性の高い大手の不動産会社に専門的なアドバイスを求める。
D.新居を決める前に銀行の融資計画を相談する。






ここまでの説明から、言うまでもなく、効率的なアプローチはBであろう、ということになる。

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