2015年9月26日土曜日

138:クリエイティビティ

優秀な頭脳集団である日本が、世界に認められる優秀な製品を出していない分野がふたつある。
これらはいずれも、ソフトウェアの分野である。


OS関連の製品がまずひとつ。
マイクロソフト・オラクル・SAPに匹敵するような技術は日本には存在しない。
むしろ日本企業は自社のシステムを設計する際、これらの企業のソフトウェアを使わなければならないのだ。


金融商品がふたつめである。
ウォールストリートなどから発信される金融派生商品は数多くあるが、日本からは出ていない。


これはなぜなのだろうか?
よく言われることかもしれないが、これは、日本人の「創造性」(Creativity)の開発が進んでいないということであろう。


そもそも、「創造性」にはふたつの側面があるのではないか。
ひとつは、天才的なひらめきのこと。
「降ってくる」などと言われているように、発想が理屈なしに出てくることである。
こちらが世間での「創造性」のイメージに近いのかもしれない。


しかし、もうひとつあるだろう。
論理的な、ロジカルな発想の積み上げによって何かを生み出すことがそれである。


天才を教育によってつくることはできないだろう。
しかし、論理的な人間を教育によって開発することはできるはずである。
欧米をはじめとする海外の企業がOSや金融派生商品を生み出した背景には、ロジックによるアプローチがあると言える。


日本での「創造性」による新しい技術や製品の開発は世界を圧倒してきた。
この「創造性」は主に、実際に存在するものに対して、実験を積み重ねることで構築されてきたのではないだろうか。
これが我が国の製造業の強みであった。


ハードウェア産業からソフトウェア産業になった途端、日本の創造的技術力が機能しなくなったとは言えないだろうか。
研究室で行う実験を、頭の中で知的に、論理的に展開するアプローチ(「創造性」)の開発ができていなかったからではないかと思う。


例えば、大型コンピュータの処理速度を現在の10倍にするという高い水準の目標を立てたとしよう。
この目標に対して、どのような思考上のアプローチがあるだろうか。
①まず、この目標を達成する上で重要となる複数の領域を明確にする。
②それらの領域で達成が困難な項目を複数挙げる。
③達成できない背景となる要因を明確にする。
④その要因を取り除くためにはどのような技術が必要か判断し、それを開発する。
⑤要因を取り除くための方策が非現実的なものであるならば、副次的な代替方策を開発する。


このようなシステマティックな発想が製造現場における実験に該当するのではないかと思う。
「創造性」を開発する・発揮するということは、より高い目標を達成するための阻害要因をどのように克服するか、という関係者の考え方のベクトルを重点的に合わせるということだ。

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