2015年9月16日水曜日

135:世界競争力ランキング(IMD)と日本の思考資源開発

スイスの国際経営開発研究所(IMD)が毎年5月に発表する世界競争力ランキングにおいて、2015年の我が国の評価は27位というものであり、世界の工業先進国として依然低迷しているようである。
この組織のランキングに一喜一憂する必要はないかもしれないが、無視することもできない。


このランキングの根拠は、マクロ経済(経済成長、政府の効率性(Efficiency)、企業の効率性(Efficiency)、インフラ)の4つの切り口からの分析である。
関心のある方はネットで調べていただきたいのだが、詳細を見ると、経済成長が29位、政府の効率性が42位、企業の効率性が25位、インフラが13位ということだった。


私はここ十数年、特に政府の効率性と企業の効率性がどのように改善されるか見守ってきた。
しかし残念ながら、ほとんど改善はされてこなかった。


ご存知の方も多いと思うが、1980年代後半から90年前半は1位であったことを考えると、政府の効率性42位ということに関して、何らかの対策を考えなければならないことは自明である。


政府の効率性が先進国の中で極端に低いという現実の背景には何があるのか。
戦後の経済成長の歴史を考えると、1980年代に発生した米国との貿易摩擦までの期間と、それ以降を比較する必要があるだろう。
例えば、1981年からはじまる日本の対米自動車輸出の自主規制では、ピークの84年では185万台に規制された。


この時期までは、日本は欧米の経営モデルや問題解決へのアプローチ法を手本とし、これを踏襲すればよかった。
しかし、この対米貿易摩擦を機に、日本は様々な状況において主体的に意思決定をしなければならない立場にはじめて立ったのではないか。


主体的・自主的に意思決定をするということは、経験や過去の数字の分析以外に、意思決定をするための論理的な思考の枠組みが必要になる。
つまり、トライ・アンド・エラーが許されない時代になったということだ。


この中で、どのように改革を図っていけば良いのだろうか。
「効率化」をしなければならない中で、私が思うに、重要なことのひとつは、知識偏重教育の抜本的な改革である。
たびたび述べていることかもしれないが、英語のintelligence、中国語の「智力」(変化に対して迅速に、適切に対応できる能力)を国としてどのように強化するのかという大テーマがある。


アジアにおいて我が国よりもランクが高い国が、どうしてそのような高い意思決定の効率性を獲得できたのだろうか。
私の考えでは、国の高官になる人物を欧米に留学させ、彼らが論理的な思考様式を身に付けて帰国することによって、政府の意思決定に対するアプローチが効率的になっているのだ。


このテーマを言い換えれば、日本人の優秀な頭脳という思考資源の開発をどのように展開するか、ということになってくるだろう。
国や企業組織の効率性を高めるための国家プロジェクトが発足しない限り、この問題は長期に日本の国際競争力へのマイナスとなっていくに違いない。


このことは、国際社会でのネゴシエーションにおいて、議論が噛み合わないことにも関連してくるだろう。

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