2014年5月13日火曜日

26:外交の原点

西郷隆盛の遺訓に次のような文句があります。


「正道を踏み国を以て斃るるの精神なくは外国交際は全かる可からず彼の強大に委縮し円滑を主として曲けて彼の意に従順する時は軽侮を招き好親却って破れ終に彼の制を受るに至らん。」


「外交を成功させるためには、国として全力投球することが必要であり、むやみに自説を相手に合わせて変えるべきではない」といった位の意味になるかと思います。


「正道」の考え方など、参考になる部分は多いでしょうが、今日でも全面的に通用するかと言えば疑問は残るでしょう。




もう予想がついている方もいるでしょうが、TPPの話です。


米通商代表部のフロマン氏を相手に大変な努力をしているTPP議論の最終的な結論が、日本の将来に大きな影響を持つことはもちろんその通りでしょうが、しかしこれだけ時間がかかっていることがかえって結論にマイナスにはたらきはじめているように思います。


日本側は「これだけ努力をしたんだ」という発想で話をしがちですが、米国側から見れば、「なぜこんな譲歩をするのにこれほど時間がかかるんだ?」という苛立ちにつながるでしょう。


西郷の話に戻れば、「正道」の今日的解釈は国際的に通用する「良識」といえるのではないでしょうか。
『広辞苑』による「良識」の定義は「社会人としての健全な判断力」とあります。
社会人だけでなく、国同士の付き合いにおいても、相手の立場に立ちながら考える健全な判断力=良識が求められているでしょう。


「相手の言いなりになっては駄目だ!」という単なる精神論では国際連盟の会議を途中退席した松岡洋介と変わりがないようにも思えはしないでしょうか。
相手の強大さに屈することはもちろん外交としてレベルの低いものでしょう。しかし一方で良識をもって相手と対話を行うことも必要なことに思われます。


結局、相手の言いなりにならず、しかし相手も思いやりながら対話するには、自説がきちんと道理にかなっていることが必要なのでしょう。
日本のTPPに関する主張は道理にかなっているか? 
これをもう一度考えた上で、最終的な議論のテーブルについてほしいものだ、と私は思うのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿