2016年10月19日水曜日

220:「返還」から「帰属」へ――ロシアとの交渉


10月3日の日経新聞夕刊の一面に「4島帰属立場一貫――首相、北方領土交渉巡り」という見出しの記事が掲載された。
近頃疑問なことがらとして、本来この問題には、「北方領土返還」という表現が使われていたように思うのである。
しかしこの記事に見られるように、「返還」から「帰属」という語へ、日本の主張の変更のようにも見える用語の変遷が起こっているのである。
「返還」であれば、4島一括返還、あるいは2島に限定した返還、といったさまざまな選択肢を考えることができるが、これが「帰属」になると、果たしてどうなのか。
本年12月のプーチン大統領訪日でどのような条件が提示されるかは皆目わからないが、現状では決着をすることはかなり困難だろう。




そこで、国際連盟の事務局次長を務めた新渡戸稲造による、オーランド諸島に関する問題解決に北方領土問題解決のヒントを見出すことはできないだろうか。
この問題は、フィンランド領であるオーランド諸島の住民のほとんどがスウェーデン系であったことから、同諸島がフィンランドからスウェーデンに帰属を移したいと主張したことからはじまった。
これに対し、国際連盟は、1921年に「新渡戸裁定」として、オーランドのフィンランド帰属を認めつつ、一方でオーランドの自治権を認め、ここを非武装中立の地域とする、という見事な解決案を提示し、問題を解決に導いた。




このような前例を参考とするならば、ひとつの考えとして、4島の帰属は日本とし、自治権は住民であるロシア人に認めるということが考えられる。
このとき、両国の友好を促進するために、ロシア側は軍事基地を建設しないという一項が認められる必要があるだろうが、これが可能ならば、問題が一挙に解決する可能性が出てくるのではないだろうか。




ロシアはソ連時代、1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約に調印をせず、その後1956年に日ソ共同宣言で日本との国交を正常化したという歴史がある。
ここでは北方2島の返還と戦争賠償の放棄が約束されたわけだが、こういった歴史的経緯も踏まえ、これからの北方領土問題がどのように進展させるのかということが、国民の注目を集めているだろう。
素人考えだが、排他的経済水域と漁業権の問題に関しては、別途切り離して考えるのが賢明なのではないか、と考える。

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